あけましておめでとうございます
年末年始の休暇は楽しく過ごせましたでしょうか
石川県沖の地震災害で辛い思いをされた方も多いかと思います
1日も早い復興と被災地の皆様の安全・健康をお祈り申し上げます
さて、2024年一発目の投稿ということで何を書こうかなと悩んでおりましたが
普段設計をしていてぼんやりと思っていることを呟いてみようかと思います
高気密住宅に薪ストーブはベストな選択なのか?
薪ストーブ
見た目の格好良さや「手ずから薪を割り火を焚く」という「手仕事感」「丁寧な暮らし感」が好き、という方も多いと思います
勿論私も、プライベートで国内外の建築家の施工事例や他メーカーの事例集を見ていて「良いなあ」と思います
お客様や営業担当も「自宅に取り入れたい」「提案したい」という方が多くなってきた体感があります
しかし一方で我々は高気密化を掲げた家づくりをしています
「快適に暖かく暮らす」ことを目的としたとき、高気密住宅において薪ストーブで暖を取ることは本当にベストな選択でしょうか?
そもそもなぜこんなに薪ストーブを「絶対に良いもの!」と言い切れないかというと学生時代に遡るのですが
所属していた研究室の教授に、ある日電話がかかってきて
「引き渡した住宅の天井が僅か1年でカビてしまった」という教授の知人からの連絡でした
私はそのやり取りを横で聞いていたのですが
電話を終えた教授が「日本の住宅では薪ストーブは向かないよねえ」と言ったことを今でも覚えているからなのです
当時はよく分からず「あれ(薪ストーブ)は寒い国で、窓を開け放って使うものだから」
「今の日本の気密重視の家で、閉め切って使うスタイルには合わないんだ」と言っているのを「へえ・・」くらいの気持ちで聞いていましたが
実務を経て最近やっと「そういう場合もあるな」と思うようになってきました
閉め切った室内で薪ストーブで暖められた空気が天井部に移動し
天井内部との温度差で発生した水蒸気が防湿気密シートによって天井内部に侵入しない代わりに室内部に溜まり屋内側で結露してしまうという事だと思うのですが
逆に言うと高窓などを設けて開放し滞留した空気の逃げ道を作ることで緩和できるような気がしています(これが「閉め切って使うスタイルには合わない」ということ?)
あとは屋内の気圧状態次第では煙が逆流する懸念もあります
これに関しては第1種換気方式だと室内の気圧状態(正圧なのか負圧なのか)は任意に選択できるうえ、高気密住宅では積極的に第1種換気方式が採用されるので特段気にする必要はないような気もしますが
例えばコスト削減で第3種換気にして、浮いた資金で薪ストーブを取り入れようとすると
薪ストーブを外気導入型のものにしたり、薪ストーブを焚く際には換気をoffにするなどの対策が必要になるかもしれませんね
外気導入型はストーブ付近の壁に孔をあけることになるので、開口部が増える分隙間相当率が多少なり上がることも想定できますし、その分のコストと毎回焚く度に対策する手間を考えると最初から第1種換気を選んでおいた方がよかった!なんて事態にもなりそうです
個人的に納得のいく答えが出ていない話を長々としてしまいました
いずれにしても思うのは、設備関係(特に温熱関係)はそれ1点注視で選んだり削ったりしまうと良くないなというところです
住宅の高性能化が求められる昨今「削れるところは削って、理想に近づけたい」状況には家づくりをする多くの方が陥ることになるかと思います
しかしその「削れるところ」、本当に「削っていいところ」でしょうか・・・
住宅従事者にもこれまでより一層正しく・新しい知識が求められるなと思います
家づくりをする皆様には
正しい知識と希望に寄り添う提案力のあるパートナーを見つけて頂きたいと思うと同時に
自分自身もそうでありたい、そうなれるようにお仕事をしていきたいなと改めて思うお正月でした